さくら色 〜好きです、先輩〜
「二人とも保健室行っておいで!ここは小野田君でも呼んで片付けておくから」
私達は若菜先輩に任せて備品室を後にした。
備品室を出てからというもの、さっきまでの雰囲気が嘘かのように先輩は何も話さず私の前をスタスタと歩いている。
「先輩…怒ってますか?」
私が立ち止まると先輩も数歩先で立ち止まってこちらを振り返った。
「…怒ってないよ。ごめん」
その声がいつもより少し甘く感じて、心臓がキューッと締め付けられる。
先輩は目を細め柔らかく微笑んだ。
廊下の窓から差し込む日差しが私達をスポットライトのように照らしている。
吹奏楽部の演奏が二人の世界を作り出してくれた。
先輩は私の手を取り、指と指を絡める。
大きくて硬い手が私の手をすっぽりと包み込んだ。
手から先輩の緊張がひしひしと伝わってきて、そんなことがくすぐったくて凄く幸せな気分になった。