時は今
こんなに好きになっていなければ、相手を傷つけてまで好きだとは言ってなかったはずなのに。
雛子はすっと立ち上がると、縫っていた衣装を持って立ち上がった。
邪魔者だ、自分は。
四季にも、忍にも。
今、ここにはいない方がきっと、四季も忍も穏やかに過ごせる。
「家庭科室で仕上げてくるわ」
「高遠さん」
雛子は四季とは目を合わせず、強気で言い放った。
「四季くんは揺葉忍が大切なら、私に期待させないで!私なんか、四季くんに優しくしてもらったら、どんどんつけ上がる人間よ!そんなの自分でわかってるの!どうしようもないの!」
「……」
四季はそれ以上、言える言葉を無くしてしまう。
雛子は疲れたように静かに言った。
「昨日、四季くんがいなくて、ほっとした。今日は四季くんが元気そうなの見て、ほっとした。…でも、私、最近心の何処かの同じ場所が毎日傷ついてる」
雛子は「ひとりにして」と言うと、教室を出て行った。樹も追いかけなかった。雛子にきつく言われていたからである。
四季は記憶を辿るようにぼーっと忍たちのところまで歩いて来ると、空いている椅子にかけた。
忍が上目遣いに四季を見る。
「四季、高遠さんと何かあったの」
「うん。だいぶ昔のことだよ。小学生の頃」
「小学生?」
「…あの女の子だとは思わなかった」
四季は左腕を見ながらそう答えた。
四季が小学生の頃──。
忍は四季の小学校時代を知らない。知らないことに少し淋しさを覚えた。
雛子は知っているのだ。そんな幼い頃から。それで四季のことがずっと好きだった──。
「四季、高遠さんと同じ小学校だったの?」
淋しさを埋めたい気持ちが、そんな言葉になっていた。
四季は「違うよ」と答えた。
杏とほのかが「四季くんは、小学校は杏とほのかと一緒だよ」と忍に教えた。
「──ちょっと、いいかな」
樹が困ったように忍たちに話しかけてきた。
「今日は衣装縫いとコーラスの練習でもいいけど…。雛子も揃っている状態できちんと練習はしたい」
「そんなこと、私たちだって、ちゃんと練習したいよ」
ほのかが言った。