ヒーローズ
「ヒーローってあの赤いマントの?」



再びパニック状態の俺の口から漏れたのは、なんともマヌケな質問で。

椎名美鈴は、あははと笑って、でもうなずいた。



「マントなんか目立つし、闘うのに邪魔だからつけないけどね」



後ろから引っ張られたら首閉まっちゃうし。笑う椎名美鈴の言葉は現実的だ。



「俺、が、ヒーロー」

「そう。ヒーローになるんだよ」



俺のつぶやきを優しく包み込む声。夢みたいなふわふわとした浮遊感。

パチン!

目の前で市原こすずが手を叩いて、大きな破裂音を出す。

いっきに意識が引き戻された。



「さて、早速だけど契約しましょ」

「契約?」

「そう、ヒーローの仕事斡旋会社に。あ、あたしのことはすきに呼んで」

「あ、じゃあ椎名さんで。……じゃなくて、なにその斡旋会社って」

「うーん。仕事をあたし達に依頼して、報酬をくれるところかな」

「報酬もらえんの?」

「うん。映画やドラマみたいに無償のボランティアなんかじゃないよ。このマンションもその報酬で買ったものだし」


ノートパソコンを開いて、カタカタとキーボードを打ちだす市原さん。

そして、俺の方にくるりと画面を向けた。

カシャッとシャッター音がする。そして登録完了の文字。

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