【短編】彼女の瞳に映る世界
「あ、はは…ごめんね、中川君。見苦しいもの見せちゃって」
どうしてだろう。
力なく笑う彼女を抱きしめたかった。
いつもならすぐに口に出してしまうはずなのに、体も何も動かない。
だけど、
「っ…中川君」
何故かこの衝動は止められなかった。
ぎゅうっと力を入れる。
僕の両手ですっぽり収まってしまう町田さんから、小さな嗚咽が聞こえてきた。
「ねぇ、町田さん」
「……ぅん」
「今、何が見えてる?」
「え?」
「何が見える?」
「……真っ暗だよ」
抱きしめた腕をそっと放して、町田さんの肩を掴みそっと離した。