【短編】彼女の瞳に映る世界

「知ってたの?」

「知ったよ。ずっと前から。言ったでしょ?視野は狭いけど、遠くまで見えるって。春君しか見てなかったから、春君の事なら何でも分かるの」

強く吹いた風に靡く髪を押さえながら、町田さんは目を伏せた。

「本当は分かってた。春君が私の事を気にしてない事も、好きな人がいた事も、私のこの気持ちが報われる事もないのも。全部、分かってた。でも私には春君だけだった。小さい頃からずっと一緒だったからこれから先もずっとそうなんだって思ってた。でもそう思ってたのは私だけだった。昨日中川君に言われる前から気付いてたの。でも知らない振りしてた。春君以外どうでもいいって思ってた自分を認めたくなかった。だけど、やっぱりこのまま春君しか見えてないのすっごく辛い。離れていく春君を見るのは、嫌だよ…」

静かに彼女の瞳から涙が零れた。

こういう時に何もできない自分を恨んだ。

無駄に知識ばかり付いたこの頭は、町田さんを慰める言葉のひとつも絞り出せなかった。

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