【短編】彼女の瞳に映る世界
「ダメ?」
「いや、ダメって言うか……その、今、ちゃんと中川君の事見えてるよ」
「智樹」
「え?」
「僕の、名前」
「智樹、君」
こういうとき、なんて言ったらいいんだっけ?
頭をフル回転させる。
「あぁ、そうか」
「ん?」
「町田さんの事が好きだ」
やっと分かった。
ずっと胸につかえていたもの。
最初はただの興味でしかなかったけど、僕は悔しかったんだ。
町田さんの瞳に自分が映っていない事が。
彼女にちゃんと僕を、中川智樹を見てほしかったんだ。