三日月の下、君に恋した
「おいしくなかったですか?」

 心配そうにこちらを見る顔に、菜生はあわてて首を振る。


「おいしい。美也ちゃんの作るものは、いつも絶品だよ」

「ふふー。よかった」


 満足そうにほほえんで、美也子はパスタの残りを口に運ぶ。それから思い出したように、

「菜生さん、葛城リョウの本って持ってます?」と聞く。

「うん。少しなら」

「じゃあ、あとで貸してくれます?」

「エッ。どうするの?」


 菜生が驚くと、美也子は拗ねた顔をした。

「読むんですよー、あたりまえじゃないですか」

「そ、そっか。そうだね」


 美也子が本を読むなんて、この一年見たことないし聞いたこともない。

「だって、決まっちゃったんですよね? あの人がうちのCMに出るって。一応、読んでおいたほうがいいかなーと思って」

「あ、えらい。それなら喜んで貸すよ。と言っても、私も3冊しか読んでないんだけど」

 パスタを食べ終えてから、菜生は部屋の本棚から葛城リョウの本を三冊取り出してきた。
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