三日月の下、君に恋した
 仕事上でも優秀な彼女たちは、責任感に溢れ自信に満ちて、いつも生き生きと輝いているように見えた。彼女たちが噂にのぼるのは、当然のことだった。

 自分と何かあったとしても──事実あったのだけど──絶対に噂にはならないだろうな、と菜生は思った。


 じっと見ていると、彼がふいにこちらを向いた。菜生はあわてて目をそらした。そばにいる美也子に適当なことを話しかけながら、なるべく航から遠く離れた席を選んだ。


 航の両隣の席には、葛城リョウと梶専務がいた。

 葛城リョウは、この前と同じ黒いサングラスをかけたまま、だるそうな態度で会議室の椅子に斜めに腰かけている。


 梶専務が何か話しかけているようだったけれど、聞こえていないのかうなずきもしない。

 確かに主任の言うとおり、この場に葛城リョウがいることは不自然だった。

 ほかの出席者も同じことを感じているらしく、会議室には緊張感と違和感とが混ざり合ったぎこちない空気が漂っている。
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