三日月の下、君に恋した
前回までは黒岩の名前だったけれど、次からは早瀬航の名前が奥付に印刷されるのだ。この、日本でいちばん売れている作家の、日本中の期待が集まる新作に。
「大丈夫だ」と航は言った。「もう終わらせるから」
風が出てきた。やはり雨になりそうだ。
「おまえには全部話す。だから、少しだけ協力してくれるか?」
リョウはタバコをくわえたまましかめっ面をして、庭のほうを向いた。
「わかってねーな」
タバコを空き缶の中に落として、不機嫌な声を出した。
「言いたくねーけど、俺はおまえにでっかい借りがあるんだよ。今まで俺がしてきたことなんて全然たいしたことじゃねーし、たぶん一生かかっても返しきれないだろーよ。認めたくねーけど、それが事実なんだからしょうがねー。あークソ、ムカつく。てめーもちっとは自覚しろ」
言い終わるとまたタバコを取り出して、すごい勢いで吸い始めた。
「要するに、協力してくれるってことだよな?」
しばらく考えてから航が確かめると、灰色の目がじろっと睨む。
「そーだっ」
「了解」
やがて雨が降り出して、庭の土を濡らしはじめた。
「大丈夫だ」と航は言った。「もう終わらせるから」
風が出てきた。やはり雨になりそうだ。
「おまえには全部話す。だから、少しだけ協力してくれるか?」
リョウはタバコをくわえたまましかめっ面をして、庭のほうを向いた。
「わかってねーな」
タバコを空き缶の中に落として、不機嫌な声を出した。
「言いたくねーけど、俺はおまえにでっかい借りがあるんだよ。今まで俺がしてきたことなんて全然たいしたことじゃねーし、たぶん一生かかっても返しきれないだろーよ。認めたくねーけど、それが事実なんだからしょうがねー。あークソ、ムカつく。てめーもちっとは自覚しろ」
言い終わるとまたタバコを取り出して、すごい勢いで吸い始めた。
「要するに、協力してくれるってことだよな?」
しばらく考えてから航が確かめると、灰色の目がじろっと睨む。
「そーだっ」
「了解」
やがて雨が降り出して、庭の土を濡らしはじめた。