三日月の下、君に恋した
「きっと嫌がらせだよ。わざと言ってるとしか思えないもん」

 さっき会ったばかりの葛城リョウの顔を思い出し、菜生はすぐには信じられなかった。

 確かに何を言い出すのかわからない人だけど、航が困るようなことをするはずはない。


「それで、どうするの?」

 太一は頼りない表情で首を振った。

「最初は、早瀬さんが今から企画内容を変更するって言ってたんですけど、部長と主任が反対して。そもそもあの企画は専務の出したものだから、勝手に変更するわけにはいかないって」


「でも、今のままじゃどうにもならないんじゃないの? 葛城先生が書かないって言いはるんなら」

「はい。ただ、その、条件があって」

「条件?」


「そうなんです。何でアイツがそんなことを言い出したのか、僕にはよくわからないんですけどね……」

 太一と美也子は顔を見合わせ、二人で同時に首をひねった。


「うちの社長が絵を描くなら、それに合わせてコピーを書いてもいいって言ってるんですよ。何のことだか、さっぱりわからないでしょ?」

 菜生はあやうく叫びそうになった。
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