三日月の下、君に恋した
「何言ってんの。一緒じゃないよ。それに彼氏でもない」

 美也子はしばらく笑っていたが、菜生が真剣なのを見ると、言葉の意味が理解できないといった顔をした。


「彼氏できたって、この前言ってましたよね」

「言ってないよ、そんなこと」

「えっ。だって」


「好きな人がいるって言っただけで……彼氏じゃない」


 こんなことを説明している自分が情けなかった。そして自分の言葉の真実にあらためて気づいて、虚しくなった。

「だから、電話に出なくても、あたりまえなんだよね」


 菜生の携帯電話の呼び出し音は、いつまで待っても鳴らなかった。やだな、と思う。


 このまま終わりにするのは、嫌だと思う。


「そんなの、たまたま出られなかっただけかもしれないじゃないですか」

 美也子がうんざりしたように言う。

「またかけたらいいじゃないですか。何度でも、つながるまでかけたらいいんですよ。迷惑かも、なんて考えるからダメなんですよ。押しが弱いんですよ、菜生さんは」
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