三日月の下、君に恋した
「美也ちゃんこそ。今日は合コンだって言ってたのに、なんでこんな早く帰ってくんの」

「えー何それ。早く帰ってきちゃダメなんですか。そういう日もありますよ、たまには」

「ふーん。そうなんだ。ふーん」

「またうたた寝してたんですかあ?」

「してない」

 まるむしのようにまるまって、膝におでこを押しつける。


「ふられたかも」


 床に落とした携帯電話を、手探りで拾い上げる。

「何ですか、突然。彼とケンカでもしたんですか」

「わからない」

「は? じゃあ何で?」

「電話に出ない」


「菜生さん、何か怒らせるようなことしたり言ったりしたんじゃないんですかあ? 旅行中に」

 美也子はソファの端に座って、からかうように言った。


「旅行って何のこと?」


「だから先週の旅行のことですよ。彼氏と一緒だったんでしょー?」

 菜生は起き上がって、にやにやしている美也子の顔を見た。
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