私の好きなあなたが幸せでありますように
1、こうして私はあなたに出会い
 私には昔から返答に困る質問がある。

『彼氏にするなら、どんな人がいい?』

 またはそれに類似するような、「どんな人がタイプか」といった感じの問いかけだ。

女子が集まってワイワイ騒ぎ出すと、なぜか必ずと言っていいほどこの手の質問が出てきた。

中学でも、高校でも、大学でも、場所が変わっても、メンバーが変わっても必ず。
この手の話題は本来話しやすいものなのかもしれない。
この手の話題が出たとき、私は出来る限り自分の存在を消すように心掛けている。
とはいえ順番が回ってきたら答えないわけにはいかない。
たいていは他人に便乗する。
あるいは一般的に好まれているタイプを口にして、「あぁ~それ分かるなぁ」という他人の共感を得てほっと胸をなでおろす。そんなことを幾度となく繰り返していた。

私は、多分他人とどこかズレているのだ。
それはほんの些細なズレだから、自分が気を付けてさえいれば、特に問題にはならない。
表面的にはうまく人付き合いができていると思う。
要するに私は八方美人なのだ。

私の内面をさらせる相手が何人いるだろう?

それは本当にごくごく少数で、気の置ける友達はかなり貴重だった。
少ない人数で、長く続く人間関係が好ましいと思っている私としては、それを特に弊害と思ったことはない。
他人は、私が思っているほどに私に関心がないと知っている。
興味の対象は、すぐ次々と新しいものに変わっていく。
そんな中で私に目がとまるのなんて、ほんの一瞬のことだろう。
それさえ知っていれば、たいていの事は乗り切れる。
現にそうやってのらりくらりとやってきた。
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