線香花火
 しばらく無言のまま二人で花火を消化する。
 線香花火は冬の夜風にあおられて儚くポトリと落ちて消えていった。
 あまりに短くあっけない終わり方だった。

「……ダメだった」

 千秋は新たな線香花火に火を灯しながら、消えてしまいそうな声でそう言った。
 わずかに震えた声は、それでも泣くまいという確固たる意志を反映させていた。

「好きだったの」

「うん」

「ずっと、ずっと、大好きだったの!!」

「うん」

「好きだったのに、どうしてそれじゃダメなんだろう」

「うん、頑張ったな」

 それ以外に何が言えただろう? 

 ボキャブラリーの少ない僕には、慰めの言葉一つ出てこない。

 ずっと近くで見ていたから。
 僕の叶わない想いを抱えながら、彼女の叶わない恋の行方をただ見ていることしか僕にはできなかった。
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