フラワーデイズ
1.

不思議な客


「それじゃ俺は配達行って来るから、後は頼むね」

 エプロンを外しながら店長は言った。私は手にしていたを止めて顔を向ける。

「わかりました。あ、明日の午前中のアレンジどうします?作りますか」

 店の奥のコルクボードに留められた注文伝票に視線を向けると店長は頷いて困ったような顔になった。

「あぁあれね。花材指定だから明日仕入れてからじゃないと作れないんだよ」

「じゃあオアシスだけ作っておきますね」

「うん、お願い。じゃあ行って来るね」

「行ってらっしゃい」

 大きな花束を抱えて店長は店を出て行く。年齢の数だけ赤いバラの花束なんて今時かっこよくないのに…と思うけど、注文主は40代の男性でまさにバブル世代だったから仕方ないのかもしれない。


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