セイントロンド


「なん…なの……?」


カインは使徒だ。
魔をもつどころか寄せつける事なんて……


「あの少年…混血じゃな?」


「え………………?」



突然聞こえた凛とした声に振り向くと、そこには…


「久し…くはないか、アメリア、困っているようだのう」


この神殿の巫女、フィリナがいた。


「フィリナ、混血というのはどういう事?」


魔女と人間との間に生まれた咎、"混血"。


昔、人間の男を襲い自らの子をもうける魔女がいた。


それは私達教会の人間は贄の夜と呼び今も忘れられぬ悲劇とされた。


母さんが聖女として君臨していた時代の事件。


今も魔女は見つかっていない。
混血の赤子達は今も教会の施設で隔離されているはず。


私はよくその施設を訪れてた。


カインだけが施設を逃れ、しかも私の傍にいただなんて………



「私は彼の傍に長い時間いたけど、魔の気配なんて…」


聖女である私に分からないという事がありえないのだ。


「少年の眼帯…おぬしの母君の封印が施されておる」


「今…なんて……?」


母さんが?
カインの眼帯に封印を?


「私はカインの事を最近まで知らなかった。母さんと関わりがあったなんて一言も……」

「だが過去に母君と接触している。わらわの過去見を疑うか?」


確かに………
フィリナが言うならば真実なのだろう。


まさか…カインが…


「うがああああああっ!!」


右目を抑えて苦しむカインに視線を向ける。


あなたが抱えていた闇…
その一つは…


「混血の血………」


なんて事だろう…
使徒の力と魔の力……


反発しあいカインの体と心を傷つけている。


母さん…………
あなたが守った彼、私も守ります。


「母君が救ったからか?」


フィリナの質問に、私は歩き出した足を止める。



私はカインを………


優しく撫でてくれる温かい手、力強く抱きしめてくれた腕。


「あの人は私に…温かいものばかりくれる。期待や責任だけじゃなくて……」


無理しなくていい、辛いなら辛いと言えばいい。


「一人じゃないと言ってくれたから…」


迷わずに私はまた歩き出す。


今度は自分の意志で…



「おぬしにそんな事を言わせるなんてのう……」


フィリナが小さく笑った気がした。










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