キズナ~私たちを繋ぐもの~


「あや、……の」

「お兄ちゃん」


兄は酔いも冷めたかのように一気に青ざめて、私の体を離した。

それは滑稽ともいえるほどで。
私は急激に悲しくなってきた。


「悪い、俺。……俺、紗彩と飲んでたはず」

「酔いつぶれたんだって。紗彩さんが車運転して連れてきてくれたの。彼女は、タクシーで帰って行ったけど」

「そうか。……すまん。俺、お前に変なこと……」

「ううん。大丈夫」


首を振って、私は乱れた服を直そうとした。
服に指をかけ、……だけどその手は動かせなかった。

触れられた掌の感触が、忘れられない。

酔った勢いだからと、今度は割りきれなかった。


見て。
私を見て。

妹としてじゃなくて、私を。

そう思ったら、再び涙があふれ出してきた。

< 125 / 406 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop