キズナ~私たちを繋ぐもの~


「もう何も心配しなくていいんですからね。これからは、今まで御苦労なさった分、楽をしてちょうだい」

「……はい」


笑顔が何故か威圧的に見えて、少し息苦しくなって俯く。


「新しいマンションも考えないとな。今のところでは狭いだろう。司そのあたりはちゃんと考えているのか?」

「大丈夫だよ」


お父さんの問いに、司は少し作り笑いのような笑顔で答えた。
和やかな会話なのに、どことなくぎこちなさに似たものを感じるのはなぜなんだろう。


「そうよ。綾乃さんがゆっくりできるような広い部屋を探さないと」

「あの。私はそんな広いところじゃなくても……」

「あらだめよ。里中家のお嫁さんが苦労しているなんてこと、噂にでもなったら困るもの」


繰り返し呟かれる「苦労」と「大変」の言葉。
その一つ一つが、私の胸を突き刺す針のようだ。

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