キズナ~私たちを繋ぐもの~

子供ができなくて。

諦めて兄を養子にして。

そうしたら予想外に私が出来て。

2人の人生もきっと波乱万丈だったんだろう。

この写真を撮った頃にはきっと、こんな風になるなんて思ってもみなかったに違いない。

胸のつまるような思いでその写真をタンスに戻すと、電話のベルが鳴った。

自宅の電話が鳴るのは珍しい。
最近では、兄との連絡も携帯ばかりなのに。


「はい。西崎です」

『……綾乃さん?』


落ち着いた女性の声。
聞き覚えがある気がする。


「はい、そうですが」

『司の母です』

「あ。こ、こんにちは」


思わず電話の前で頭を下げた。

司のご両親は、葬儀には来なかった。
声を聞くのも、食事をした日以来だ。

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