キズナ~私たちを繋ぐもの~
ひどいことを言っている。
あんなに優しくしてもらっておいて、私はなんて事を言うんだろう。
だけど、言葉に出してみて初めて、本当にそうだと思う。
いつも流されてしまって。
弱い自分を受け入れてもらって。
甘やかせてもらっているくせに、ちゃんと幸せにもなれない。
そんな自分が、大嫌いだった。
ずるい自分が、ずっとずっと嫌だった。
「綾乃」
「あなたの事が、好きだったの。……だから不幸にしたくない。私には、あなたを幸せにする自信はないの」
「……」
「だから、……別れてください」
私は指輪をそっと外して、司の目の前にあるコーヒーの脇に置いた。
司の拳は、軽く震えていた。
けれど、司は何も言わなかったから。
私はコーヒー代の千円札を一枚置いて、席を立った。