キズナ~私たちを繋ぐもの~

 
 こみ上げてくるものを押さえて、玄関に行きパンプスを履く。

自覚したところで、どうにもならない。
昨日のキスは、多分酔っ払ってしてしまったことで他意はないんだろう。

兄はずっと兄だった。
その距離を近づけてくれる事は無かった。

だから言えない。
この気持ちは塞ぐしかない。


「……プロポーズ、どうしよう」


優しい恋人は、いつだって甘えさせてくれる。
私はずっとそれにすがっていた。

だけどそれは、ある意味では司を利用しているのと同じだ。

それにもう逃げられない。

決断を迫られた以上、何かしらの結論を出さなきゃならない。


「会社、行かなきゃ」


玄関のカギを閉めて、バス停へと急いだ。

慌ただしさに身を沈めて、考えることから逃げようとしている自分自身が、
どうしようもなく情けない。

だけど、そうすることしかできない。


私は、ズルイ女だ。



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