キズナ~私たちを繋ぐもの~
「車を回してくるから待ってて」
彼は、気を取り直したようにそう言って身を翻した。
傍にいた大きな体がいなくなって、吹き付ける夜風は冷たい。
一月の空気はどこか鋭利で、強い風が頬を滑るだけで切りつけられたような感覚になる。
この冷たさはきっと正当なものだ。
これが彼を傷付けたことへの代償なんだと思うと、少しだけ気が楽になる気がする。
もっと、風が吹けばいい。
ほんの数分で、車に乗った彼が現れる。
「家まで送るよ」
そう言って、わざわざ一度降りて助手席のドアを開けてくれた。
助手席に乗り込むと、冷たい風の攻撃からは逃れられる。
車内が温まるまではと、運転しながら片手で手を握って、
家の前まで着くと、肩を引き寄せて優しい触れるだけのキスをくれる。
彼の優しさが苦しい。
泣きたくなるほど。