先輩と僕
「え、スカウト?んー、まあ、そんな感じ、だよねー?」

クジカワさんはそう言って、僕に笑いかけた。

なんか悔しいけど、クジカワさんの笑顔に釣られて、僕も

「だよねー」

とか言ってしまう始末。

「意味がわからん!」

アキラがそう言うと、それまで黙っていた店長が、

「えーと、君も、ここでバイトする?」

とアキラに言い出した。

なん...だと...。

アキラも驚いたようで、飲んでいたコーラを噴きかけていた。

「え!俺?」

「あ!そっかー!お友達も一緒だと、働きやすいかもねー!」

クジカワさんも便乗している。

「え、マジ、何この展開...」

アキラが、数分前の僕と同じ状態になっている。

僕はなんだか少しおもしろくなってきた。

「アキラ、お前も働けよ!」

「え!ユウトまで?」

「どうせヒマだろ!」

「どうせヒマだろ!」

僕が言ったすぐ後に、クジカワさんも同じセリフを言い出した。

この人やっぱりちょっと変わってるかも。

「えー...あー...でもあれか、ここ、マイミの兄ちゃんもいるんだっけ...」

アキラはぶつぶつ言うと、

「あ、じゃあ、働きます」

意外にあっさりと働くことを決めた。

「店長ー!二人目ゲットですねー!」

クジカワさんが嬉しそうに叫ぶ。

そして、僕たちに向き直り、ぺこりとお辞儀をして、こう言った。

「えっと、あたし、クジカワユウカでーす!これから、よろしくねー!」

久慈川憂佳。

それが、先輩の、名前。

これが、先輩との、出会いだった。
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