先輩と僕
しかし、僕の心の中のツッコミもむなしく、二人は勝手に盛り上がり、僕もなんだか諦めの境地で、<アルバイト誓約書>にサインをした。

アルバイト誓約書
私は、これからベリーズで勤務するにおいて、店舗ルールを遵守し、これに違反した場合に解雇などいかなる処分を受けても異議申し立てしないことを約束致します。
水野優人

「これでもうベリーズのバイト仲間だねー」

サインした後にいきなりクジカワさんに頭を撫でられ、僕は一瞬びくっとした。なんなんだこの人は。

しかし、その時にも真っ赤なブラがチラ見えしていることに気づき、僕はにやにやしながらおとなしく頭を撫でられていることにした。

「じゃあ、正式な履歴書とかは明日持ってきてもらうとして...、あ、とりあえず、最初の出勤、明日でいいのかな?」

店長は<アルバイト誓約書>を何かのファイルにしまいながら聞いた。

「ああ、はあ、まあ」

明日とかいきなりだな、と思いながらも、もう諦めていた僕は適当に返事をした。

明日の予定より目の前のブラが大事なのが、健康な高校生だし。

それに...、夏休みは何も考えずにここでバイトに勤しんでいるほうが、自分にとってもいいような気がしてきていた。

そんな会話をしていると、いきなり後ろからアキラの声がした。

「ユウト!何してんの?」

「アキラ...」

自分でも何してんのかはよくわからない。

「なんか、ここでバイトすることになった」

「はっ?」

「いや、俺もよくわかんないけど」

ちなみに僕は、同級生たちと会話する時の一人称は<俺>だ。なんとなく。

「何その超展開?どういうこと?」

アキラはドリンクバーでコーラを注ぐと、僕の隣に立ってクジカワさんのほうを見た。

「お姉さんの、スカウト?」
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