私の烏帽子さまっ!
「実は私、最近まで森の中でずっと眠っていた。だから、自分の正体だけは、妖ということ以外あまり覚えていない。」
『え…?じゃあ自分が何の妖ってことも?』
眠ってたって…。どこかのお伽話かっつーの。
「何の妖って、どういう意味だ?」
『あぁ、ほら犬神とか妖狐とか妖にも色々種類あるでしょ?だからどの類に属してるのか、という意味よ。』
「んー…。自分がどの類に属してるのかは分からないが、犬神や妖狐のような獣の妖でないことは確かだ。」
うわ。なにその曖昧さは。
どれくらい眠ったら自分のことについて忘れてしまうのだろうか?
『じゃあ、烏帽子はどれくらい眠ってたのか分かる?』
「千年かな。」
『せっ千年!?』
凄い。気が遠くなるような年月を眠っていたのか。そら忘れるよ。主従関係の儀式とか自分が妖ということを覚えてるのが逆に凄いわ。
「そう、千年だ。どういう訳で眠っていたのかは分からないが、初めて愛花を見たとき、この人を主にしようって真っ先に思ったんだ。」
そう言って頬を緩めて、私の手をそっと握る烏帽子。え?いや、そういう展開は期待してないんだけど。キスとかもうしたくないからね?
『顔…近いんだけど。』
「…嫌なのか?」
はぁ!?変態かお前は!!
『あのねぇ!普通キスは好きな人としかじゃないと嫌なの!!主従関係とかよく分かんないけど、とにかくそういうことをしたら、烏帽子のこと許さないから。』
自分でも驚くほど言葉がスラスラと出てきた。言い方キツいかもしれないけれど、これが私の本音よ。
「……。」
あれ、やっぱり言い方良くなかった?
黙り込んじゃったよ。
『あの…烏帽子。ごめんね?私…』
「先程からずっと思っていたのだが。」
黙り込んでるかと思いきや、いきなり烏帽子は私の謝罪の言葉を遮って、話し出した。
「愛花は新鮮だ。」
『…は?』
新鮮!?どういう意味だ。
確かにピッチピチの15歳ですが。
「あ、えっと…今まで会ってきた女とは違うという意味だ。こんなに気の強い女は初めてだ。」
『なっ…!』
悪かったわね、気が強くて!
『あれ?今まで会ってきたって…記憶戻ったの?』
「いや、この記憶はもともとある。記憶が無いのは私の正体についてだ。」
『そっか…。』
ふにっ。
『え…』