紙のない手紙
「ま、待てよ!さき、な?あの時は…その…何て言うかさ…」






笹川は近づいてくるさきを押し退けるように、両手を前に伸ばした。







口を開けたはいいが、殺した相手に何の弁解も通じるはずもないと理解していたのか、笹川は次の言葉を話せずにいた。








そんな彼に追い討ちをかけるかのように、さきの口が開いた。








「……許さない…」








たったの一言。









しかし、それが逆に笹川にとっては恐ろしかった。

まだ恨み辛みを延々と並べられる方がまだ良かった。






彼女の放った一言は、笹川の胸をえぐり、彼女の歩みは、笹川の心をかき乱した。








「…や、やめてくれ。さ、さき!なぁ!」








悲痛の叫びを上げ、殺した相手に許しを請う笹川だったが、さきの歩みは止まらず、彼女は2メートルほど離れた所で、笹川の首辺りに両手を上げ、ゆっくりと歩みよってきた。
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