紙のない手紙
リンの鋭い眼光からは逃げられたが、俺にはそれに勝るとも劣らない恐怖を味わっていた。









「うわぁぁ…ちょ…お前、ちゃんと飛べぇぇ!」








「うっさいっす!2人乗りは難しいんすよ?」









リンの自転車のような高速移動はなかったが、低速で蛇行する方がいつ建物に当たるかとヒヤヒヤさせられる。








「あっ!見えた……っすぅぅぅ!?」







「てめ…!気を抜くぬぁぁぁぁ!」









何かを見つけた忠時は注意が散漫になり、俺達の乗った旗は急降下した。









俺達はビル2階程の高さからほぼ垂直に地面へと落ち、とんでもない衝撃が下半身から伝わってきた。









「「ぐおあぁあ!」」







2人揃って痛みを口から吐き出すかのように叫んだ。









「お、お前との2人乗りは2度と御免だ。」







「ううう……」









まだ涙目で痛みを耐えている忠時を横目に、すぐ側にある大きな建物に目をやった。










『死神協会本部』








ガラス張りの扉の上にある壁に金の文字でそう書いてあった。
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