琥珀色の誘惑 ―王国編―
日本語を話すアラブのイケメンに、女性たちは喜んで付いて行った。


「僕は母上の故郷を知らない。だから、日本人女性と日本の話がしたかっただけなんだ!」


……それはともかく。

彼の部屋に入った途端、女性たちはシャワーを浴び始めるらしい。彼が、ドバイでは婚外交渉が禁止されていることを教えても、「イスラム教徒でないから平気」と答えるのだそうだ。

彼自身がムスリムなので戒律を理由に断わると、『クアルン女性なら死んでも口にしない』言葉を投げつけて、彼女らは出て行った。



「そ、そりゃ、ひとりやふたりはそういう女性だって」

「八人だ! 八人目は金を盗まれたと言うのでホテル代を清算し、飛行機のチケットも用意してやった。だがその翌日、彼女はパーム・ジュメイラのビーチにいた!」

 
(うーん、それをわたしに言われても……)

 

とんでもない波乱の空気は、静かに離宮全体を包み込んで行くのだった。


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