琥珀色の誘惑 ―王国編―
ジャンビーア片手にラシード王子が飛び出そうとした瞬間、窓が開き中に飛び込んできたのはミシュアル王子であった。
 

「ア、アル……僕は」


肌にピッタリ張り付いた黒いTシャツと、スリムなラインの黒いパンツを穿いている。一言で言えば、泥棒スタイル。

焦げ茶の髪も微妙に黒の装いにマッチして見える。

ただ、琥珀色の瞳だけが闇に潜む野獣のようであった。


ミシュアル王子はひと回り小柄な弟の襟首を掴むなり、裏拳で顔面を殴打した。

ラシード王子は一瞬で床にへたり込む。


「この愚か者め。ライラとの密談を、私に進言した側近に感謝しろ!」


ミシュアル王子はラシード王子の首根っこを持ち、ズルズル引き摺ってベッドの裏に回る。


「舞、今から私の言う通りにするんだ。出来るな?」

 
ミシュアル王子に教えられた通りに言ったのがさっきの台詞だ。

実を言えば、アーイシャ・モハメッド・イブラヒーム、というのが自分の名前なのはわかるが、それ以外はサッパリ意味がわからない。

でも、咄嗟に覚えた言葉が間違ってなかったようで、舞はホッとした。


「ねえ、アル? 今ので良かったんでしょう?」


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