琥珀色の誘惑 ―王国編―
舞がベッドの裏を覗き込むと、ミシュアル王子が弟の首を絞めている最中だった。


「ちょっ! ちょっと待って、アルってば。ラシードが死んじゃうって!」

「貴様は舞にコレを使ったのか? 舞の裸を見たのか? 答えろシード!」


ミシュアル王子の手に握られていたのは……ラシード王子が必死でつけようとしてた避妊具だ。


「つか……って、ない。顔は見たけど……からだには一切……見ても触れても、いない」

「本当よ。本当に一生懸命つけようとしてるトコを、わたしが蹴り飛ばしちゃったの。でも、ラシードが悪いんだからね。あんなもの見せるから……」

「お前は、み、みたのか? シドの――」


ミシュアル王子は愕然としている。


「ひょっとして……純潔じゃなくなるの?」


驚いて尋ねる舞にミシュアル王子は首を振りながら答えた。


「そんなケースがコーランにあったか……記憶にない。だが、男が肌を見られることは大した問題ではない……たぶんアレも同じであろう」


ふたりが話す背後で、ラシード王子がこそこそと逃げ出そうとしていた。だが、そんな弟を捕まえ、ミシュアル王子が尋ねたことは、


「まだ聞きたいことがある。お前、十四の時ライラに何をした? まさか……」


その瞬間、ラシード王子の唇はワナワナと震え始めた。


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