琥珀色の誘惑 ―王国編―
『ライラ、僕の妻になって欲しい。必ず、兄上以上に幸せにする。僕の妻になれば、マフムードとは結婚しなくて済むんだ。それは君の望みだろう?』


強引にでも奪ってしまえばいい。それをライラの父に知らせれば、彼女は自分の妻にならざるを得ない。ラシード王子はそれが最善の策と信じ、ライラのアバヤを剥ぎ取り、唇を重ねた。

だが組み伏せた胸の下で、ライラは震え泣いていた。


『あの王太子の妻になるのは嫌。シドも好きよ。でも、あなたの妻になったら、もう二度とアルに逢えない……』



「僕はライラを抱いてはいない。でも、彼女の部屋に留まり、マフムードが来るのを待ち――」

「馬鹿者っ! 奴がそのまま引くとでも思ったのか? 十四の子供相手でも容赦はしない。お前を殺すはずだ」

「それでいいと思ったんだ。例え誤解であっても、疑われるような真似をした僕が悪い。僕の不始末の責任を取り……きっとアルがライラを妻にしてくれる、と」


舞はラシード王子の言葉を聞き、それがもしライラの計算であったなら許せない、と思った。

どうしてここまで愛してくれる相手を、ライラは利用するのだろう。


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