琥珀色の誘惑 ―王国編―

(20)甘い不安

ラシード王子の落としたジャンビーアを、今度はミシュアル王子が手に取った。

切っ先を真っ直ぐラシード王子の額に向ける。


「言え。十四歳の少女から純潔を奪い、逃げたのか?」

「違うっ! 僕は、僕は……」



それは、今から八年前のこと。マフムード王太子のあまりの無軌道ぶりに、クアルン王家は揺れていた。

陰謀が渦巻く中、ライラはその夜、マフムードに捧げられることに決まってしまう。

娼婦ならず性奴隷を買い、余興と称しては残虐非道な振る舞いをするというマフムード。父や一族の願いとはいえ、十四歳の少女に耐えられる相手ではなかった。


ラシード王子は長年ライラを見つめており、その心が自分にないことは、とうに察していた。

だが、マフムードの妻になりたくない。

そんなライラの願いを叶えるには、ラシードの取れる手段は限られていて……。


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