琥珀色の誘惑 ―王国編―
ちょっとミシュアル王子を困らせてやろう、そんなつもりだった。

ところが、恐ろしいほど真剣な表情で、ミシュアル王子は彼女を睨んでいる。舞は怖くなり、そのまま俯き口を固く閉じた。


「シド、お前は先に行け。私の宮殿で待っていろ。逃げたらただでは済まぬぞ。それから……」

「わかっているさ。アーイシャ殿の発言を本気にするな、と言いたいんだろう? 母上もそうだが……そんな厄介な日本人女のどこが良いのか」


小声でブツブツ呟いていたが、やがて、ラシード王子は暗闇に消えて行った。



祈りの間に取り残されたのはミシュアル王子と舞のふたりきり。

舞はさっきのミシュアル王子の態度に……「ちょっとくらい拗ねたくなるのは女心じゃない!」という不満があった。

それでも、舞だけだと言って欲しいだけだ。何度も、何度でも、言葉や態度で確認したい。そうしなければ舞のちっぽけな自尊心など、立ち所に溶けて無くなってしまうだろう。それは、砂漠に置いた氷のような儚さだった。


うなだれる舞の頬に、ミシュアル王子の指先が触れた。

次に、舞の顔を覗きこむように、王子の唇が近づき……舞の唇に重なった。


「ア……アル」


ミシュアル王子の大きな手は、舞の腰を包み込むように掴んでいる。そのまま自分の腰に引き寄せ、片方の手が舞の胸に触れた。それも、優しく触るといった感じではなく、しっかりと揉んでいる!


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