琥珀色の誘惑 ―王国編―
ミシュアル王子は床の間の前に立ち、壁際に下がった十本くらいの紐の中から、金の房が付いた紐を引いた。すると、スルスルと絵が巻き上がって行く。
だが、絵の裏側は何の変哲もない壁があるだけだ。
今度は赤い房を引き、絵はストンと元の位置に戻った。
そして、ミシュアル王子がもう一度、金の房を引っ張ると……今度は、絵は動かない。舞が耳を澄ますと、どこかで空気が振動するような微妙な気配を感じる。
次に、青い房をグイと引っ張る。
すると、再び絵が巻き上がり、なんとその裏にはポッカリと穴が開いていた。
「ど、どうなってるの?」
「順番がある。強引に絵を剥がしても、秘密の通路を見つけることは出来ないのだ」
「凄いんだ。本当に王宮って感じよね」
「当たり前であろう。今更何を言っている」
ミシュアル王子の馬鹿にした口ぶりに、舞もついつい拗ねた口調になり……。
「それは悪かったですね。どうせわたしは普通の女子大生で、何にも知りませんから。あのライラだったら、よぉく知ってるんでしょう? だったらライラと結婚すれば?」
「――舞、この国で迂闊な発言は命取りになる。陛下やマッダーフの前で同じことを言えば、お前との婚約を解消し、ライラを妻に迎える羽目になり兼ねない。だが……それがお前の本心であるなら受け入れよう」
だが、絵の裏側は何の変哲もない壁があるだけだ。
今度は赤い房を引き、絵はストンと元の位置に戻った。
そして、ミシュアル王子がもう一度、金の房を引っ張ると……今度は、絵は動かない。舞が耳を澄ますと、どこかで空気が振動するような微妙な気配を感じる。
次に、青い房をグイと引っ張る。
すると、再び絵が巻き上がり、なんとその裏にはポッカリと穴が開いていた。
「ど、どうなってるの?」
「順番がある。強引に絵を剥がしても、秘密の通路を見つけることは出来ないのだ」
「凄いんだ。本当に王宮って感じよね」
「当たり前であろう。今更何を言っている」
ミシュアル王子の馬鹿にした口ぶりに、舞もついつい拗ねた口調になり……。
「それは悪かったですね。どうせわたしは普通の女子大生で、何にも知りませんから。あのライラだったら、よぉく知ってるんでしょう? だったらライラと結婚すれば?」
「――舞、この国で迂闊な発言は命取りになる。陛下やマッダーフの前で同じことを言えば、お前との婚約を解消し、ライラを妻に迎える羽目になり兼ねない。だが……それがお前の本心であるなら受け入れよう」