琥珀色の誘惑 ―王国編―
――妻は生涯ひとりだ。十五年も昔から、ただひとりに定めてある。


ヌール妃は頷きながら、


「わたくしにもそう仰いました。アッラーに誓いを立てた妻はただひとり。……マイ、何があってもアルを信じて下さいね。何事も運命です。わたくしの我侭も、あなた方を引き合わせる為のアッラーの思し召しだったのよ」


そう言うと楽しそうに笑った。

頼りがいが舞の母とは段違いだが、前向きな明るさは母に通じるものがある。出来ればこの後宮に残っていただき、一緒に暮らせれば心強いと思う。でも、前国王の妻たちは、夫と共に王宮を出るのが決まりらしい。


それ以外にも、ラシード王子は三回もライラの父に結婚を申し込んでは断わられている、とか。

このまま行くとライラには求婚者も居なくなるだろうから、そうなればマッダーフもラシード王子で手を打つだろう……等々。


「まあ、ここまで来たら誰が勝つか、我慢比べでしょうね」


ヌール妃に掛かったら、ライラも小娘扱いだ。ミシュアル王子のお迎えまで、舞は予想外にも楽しい時間を過ごせたのであった。


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