琥珀色の誘惑 ―王国編―
同じ三日月を見上げる女性がひとり……。


アブル砂漠に程近い都市、カンマン市内の離宮に彼女は滞在していた。

そこは砂漠に向かうにも、更に南下して隣国へ行くにも都合のいい場所。サマン王女が父王より受け継いだ離宮。やがてはサマン王女の娘、ライラへと引き継がれる。
 

ライラは離宮の一室から空を見上げた。

離宮には数少ない母との想い出が詰まっている。それも哀しい想い出が……。母は娘を見るたびに泣いていた。それはライラが赤ん坊の頃から、つい最近まで。


『あんなに苦しい思いをして産んだのに、なぜ男子でないの!?』


この世に生まれ落ちてから、何度となく聞かされた言葉だ。

その後もサマン王女は妻の役目を果たそうとしたが、第二子以降には恵まれず。サマン王女は四十歳になった時、夫、マッダーフに別居を申し入れた。現在はヨーロッパの別荘か、クアルン南西部ルシーア地方の別邸で生活している。


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