琥珀色の誘惑 ―王国編―
王子の近くに控えていたターヒルはスッと扉の正面に立つ。ミシュアル王子に危険が及んだ際、側近のターヒルには盾になる義務がある。

王子自身も身構えた瞬間、扉を激しく殴る音がしてひとりの警備兵が飛び込んできた。

ミシュアル王子はその顔に見覚えがあった。後宮と宮殿を繋ぐ外出口に立つ警備兵に違いない。


『おう……たいし殿下に……申し上げますっ!』


肩で息をしながら、部屋の中央に転がるように警備兵は入って来た。彼はそのまま両膝をつく。


『何事かっ』

『はっ! 女官より報告がありました。アーイシャ様のお姿が見えません! 後宮から出られた由にございます』

『馬鹿者っ! 何のための警備兵だ!』

『申し訳ございませんっ』


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