琥珀色の誘惑 ―王国編―
ミシュアル王子が後宮内に駆けつけた時、妃の間に平伏すのはシャムスだった。

その愛らしい顔は、今は恐怖に打ち震えている。


『シャムス、お前がアーイシャを逃したのか?』

『滅相もございません。私は……』


ミシュアル王子は立ち去る時、くれぐれも舞をひとりにしないように、とシャムスに命令した。

シャムスも当然、それに従う。だが、舞の嘆きようが見ておれず、シャムスは扉の外に控えていた。


しかし一時間ほど経つと、女官のひとりが舞を気遣い、日本茶を運んで来たと言う。しばらくすると、舞はその女官と一緒に庭を歩きたいと言い出した。

その女官は元々王宮のヌール妃に仕えていた者。日本語や日本の慣習をよく理解することから、舞のためにミシュアル王子自身が引き抜いた女官だった。

そのような事情から、シャムスも簡単にその先輩女官を信用し、庭に送り出してしまい……。


そのままふたりは後宮の庭から消えた。


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