琥珀色の誘惑 ―王国編―
『ライラ様……これで、息子が犯した不始末は見逃して頂けるのですね? 旦那様に報告することだけは』


十八歳の女官見習いであったクブラーを愛人にしたのは、ライラの父、マッダーフ。マッダーフは妻、サマン王女が産んだかのように、クブラーの息子を嫡子にしようとした。

しかしサマン王女に拒否され、クブラーの息子は屋敷に引き取られただけとなる。優秀であるなら父の目にも留まっただろうが……。気弱な青年は悪い友人に脅され、ハルビー家の美術品を持ち出し、金に替えた。 


『ええ、悪いようにはしないわ。お前の息子はわたくしの弟ですもの。ねぇクブラー、息子の為なら何でも出来るわよね?』

『はい……命に替えましても』


古い大きな窓を背に、ライラは莞爾(かんじ)として笑う。

緩やかに波打つライラの茶髪には、舞から奪い取ったかのような月光のティアラが煌いていた。


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