琥珀色の誘惑 ―王国編―

(3)結婚のゆくえ

『それは……可哀想なこと。でもマイは若いのですから、二~三日ゆっくり休めば、結婚式までには体調も戻るでしょう。気持ちの問題でもあるのだから……無理を言ってはいけませんよ、アル』

『……はい』


ヌール妃の言葉に、ミシュアル王子はゆっくりと頭を下げた。


王宮内のミシュアル王子の執務室である。

ヌール妃に直接話したいと無理を言い、表まで来て貰ったのだ。王子は母に、舞の具合が悪く、砂漠へ向かうのを数日遅らせると報告した。

ヌール妃が後宮に戻った後、控えていたターヒルが中に入り、ミシュアル王子の前に跪く。


『どうやら見当違いだったようで……申し訳ございません』

『そのようだな。だが、母上はクブラーに何の用も言いつけてはいない、とのことだ。これをどう考える?』


尋ねられたターヒルは、慎重そうに言葉を選びつつ答えた。


『可能性は三つでございます。クブラーひとりの考えによるもの。或いは、殿下とアーイシャ様の結婚を阻む第三者の命令。最後に、アーイシャ様ご自身の願い』

『最後のケースは却下だ。選択肢から外せ』

『しかし……アーイシャ様は日本に帰りたいとの仰せで……』


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