琥珀色の誘惑 ―王国編―

(4)疑惑の果てに

舞が手にした写真立てには、ライラの写真が入っていた。

セピア色の写真なので少し印象は違う。

ただ、ヒジャブで頭は覆っているものの、口元にニカブを付けていないので顔はハッキリと写っていた。生後数ヶ月の赤ん坊を抱いているようだ。背景から言って、この屋敷の庭で撮影されたものに違いない。


(なんで……ライラの写真がヌール妃の別邸にあるわけ?)


その時、写真立てが随分年季の入ったものであることに気付く。

舞はすぐさま、この女性はライラの母親ではないか、と思った。シャムスから教わった、サマン王女の名前も思い出す。

だが……結婚の十六年後にライラが誕生したということは、単純に足し算してサマン王女は三十八年前に結婚したはずだ。

ヌール妃が嫁いだのが二十八年前。一体、何処に接点があるのだろう?


(母親と仲が良かったから、ヌール妃はライラを可愛がってる、とか?)



その瞬間、舞は背後からアラビア語で話し掛けられた。

名前もわからないが、この屋敷に勤める舞より若いメイドだ。屋敷の使用人はほとんどが外国人労働者だという。そのせいか、首都で聞いたアラビア語とは少し雰囲気が違った。

メイドは怒ってる様子はなく、戸惑っている感じだ。

舞は慌てて愛想笑いで誤魔化しながら、部屋を飛び出した。


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