琥珀色の誘惑 ―王国編―
『ではこの電話の相手に、日本語で話すように伝えた意図は?』

『彼女は日本語が得意ですので』

『この女は我が後宮の女官クブラー・ビント・ハマドではないのか?』

『名は存じません。どうしてわたくしが、アルの女官と連絡を取るのでしょう?』

『屋敷の外に連れ出し、飲酒を勧め、男とふたりの所を写真に撮らせろとは如何なる魂胆か? この者の居場所は何処だ?』

『場所を聞かれてどうされます? これで、跳ね返りの娘もおとなしくなるでしょう。どちらにしましても、王太子の後宮で臥せっておられますアーイシャ様とは何の関係もないこと。そうではありませんか?』



この時になって初めて、ミシュアル王子はライラが一筋縄でいく女性ではないことに気がついた。

黒いアバヤの中に、これほどまでの鋭気を隠していたとは……。

マッダーフの鷲のような眼差しを思い出し、ライラが男であれば、次代のハルビー家当主になったであろうと考えた。


だが、今は舞を探すのが最優先事項だ。その為なら……。



『殿下! それは……。相手は武器を持たぬ女です!』


ミシュアル王子の行動に、ターヒルは顔色を変え叫んだ。


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