琥珀色の誘惑 ―王国編―
ライラが直接ハディージャ妃に聞いたというなら、それを何故隠すのか。

ミシュアル王子は深夜にも関わらず、王宮の執務室にハディージャ妃を呼び出して質疑した。その結果、ハディージャ妃が舞に“第二夫人”の件を話したのは、ライラの誘導であることが判明したのである。


『ライラは正妃となるべく産まれてきた娘ですから。あの日本人が何か勘違いをしてるのでは? と気にしておりました。機会があれば、ちゃんとお伝え出来るのに、と。ですから、代わりにわたくしがお伝えしたまでのこと。何の偽りも申してはおりませんわっ!』


こんな夜中に……とハディージャ妃はブツブツ言いながら後宮に戻って行った。

仮にライラが何かを企んでいても、所詮女のやることだ。ミシュアル王子はその程度にしか考えてはいなかった。だが、ライラが度々王太子の宮殿を訪れ、後宮に出入りした際にクブラーと懇意になっていたとしたら……。


ミシュアル王子はターヒルに、ライラの個人電話を盗聴させたのである。



ライラは録音されたクブラーとの会話を突きつけられ、一瞬で表情が変わった。

しかし、


『アーイシャは我が別邸の使用人の名。主人に逆らう為、懲らしめております』


済ました顔で答えたのである。


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