琥珀色の誘惑 ―王国編―
シンプルな専用機の内装とは違って、ミシュアル王子の宮殿はアラブ様式の美しい装飾に満ち溢れていた。

正門にはライフルを持った衛兵がいて、そこを抜けると広大な庭がある。意外と多い緑に目を奪われた時、庭のそこかしこに立つ衛兵に気づいた。

舞はここが日本でないことを、改めて自覚するのだった。


宮殿は正殿と後宮に別れており、簡単に言えば正殿はリビングや客間があって、後宮が私室である。

この後宮が悪名高き“ハーレム”なのだが……。

それなりにミシュアル王子の過去の女性関係に腹を括った舞にすれば、何が出てくるのか興味津々だった。


舞は宮殿に入ってからミシュアル王子の二歩後ろを歩かされていた。

だが後宮に向かう廊下に入った途端、ミシュアル王子は振り返り、舞の手を取ったのだ。


「暑くはないか? 何か困ったことは?」


まだクアルンに入国して二時間も経ってはいない。

ただ、驚いたことはあった。


飛行機を降り、専用車に乗って宮殿まで来たのだが、空港から宮殿まで、ちょっとしたパレードだった。

沿道ではクアルンと日本の国旗が振られ、国民は口々に何か叫んでいる。

ミシュアル王子に尋ねると、『お妃さま、万歳!』と大歓迎されているらしい。

大反対されて追い出されるんじゃないか? と覚悟していた舞にはかなり感動的なことだった。

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