琥珀色の誘惑 ―王国編―
だが、これにはちゃんとした理由があった。

以前、ミシュアル王子が言ったように、クアルンの男には絶対的な強さが求められるのだという。今回、王族や部族の長老連中を押し退けて、日本人婚約者を妻にすると王子は宣言した。そして、それを為し得た王子は『強い!』ということになり……。

元々国民に人気のあるミシュアル王子だ。
その王子が連れ帰った花嫁を一目見ようと、ダリャ市民が押し寄せた、とのこと。



「今のところ困ってはいないんだけど……でも、喉が乾いた時はこのニカブって取っていいの?」


ゆったりとしたマスクを嵌めた状態である。このままで飲食は不可能だろう。

舞の素朴な疑問に、ミシュアル王子は面白そうに笑って答えた。


「なんだ、そんなことを考え込んでいたのか? 案ずるな、食事の時には外すものだ。それに、後宮では無理に着用せずとも良い」

「もう一つ気になるんだけど……」

「言ってみよ」

「空港で集めてくれた洋服って、全部飛行機に乗せたんじゃなかった? あれって……どうなるの?」


リクルートスーツからギャル系まで揃っていたような気がする。色も形も様々で、あんなに肌を露出した服など、クアルンで着る機会があるのだろうか? 舞にとっては深刻な問題だ。


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