琥珀色の誘惑 ―王国編―
「どうもならぬ。全て宮殿に運ばせた。女官たちが、後宮のクローゼットに仕舞うだろう。明日にでも確認して、気に入った服を着ると良い」

「どれでも……着ていいの?」

「そうだ」


(ほ、ほんとかなぁ?)


着たら着たで怒られそうな気がすると思いつつ、ふたりは後宮の扉の前に立った。

側近のターヒルやヤイーシュはここまでだと言う。

これより先は男性立ち入り禁止、入れるのはミシュアル王子だけだ。

家族でも男子は七歳以上になると正殿に部屋を与えられ、生活は別になるらしい。舞は自分に息子が産まれた時のことを考え少し暗くなった。でも、今から落ち込んでいても仕方がない。

 
正殿以上に華やかな色に包まれた後宮は、一歩足を踏み入れた正面に……提灯があった。

 
(な、なんで提灯? それも縁日みたいな? なんでなのっ)


「見てくれ、舞。日本の家屋は玄関に提灯があると聞き、取り寄せたのだ……心が落ち着くであろう」


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