琥珀色の誘惑 ―王国編―
クアルン市内の女性たちは、全身真っ黒の装いで、当然顔もわからない。後宮では違うが、ヤイーシュが後宮内に入れるはずもなく……。


「なんで、ヤイーシュがライラの顔を知ってるわけ?」

「何やら、お疑いのご様子ですが。ライラ様は革新的な女性ですので、留学中は肌を隠してはおられませんでした。殿下のお供でオーストラリアを訪れた際にお顔を拝見して」

「革新的? ライラが? 正妃の座を狙ってるんだから、超保守的の間違いじゃないのっ?」

「いいえ。ライラ様は留学を選択されたほどですから」



ヤイーシュ曰く、現国王が即位してクアルン王国はかなり変わったという。

女性の地位向上、女性解放運動等の国際的な動きにも同調し、女性の通える大学が増加した。多くの職業に女性も就けるようになり、ビジネスエリアに女性用トイレが出来たことは、この国にとっては凄い進歩らしい。

それに伴い、大学での交換留学制度も女性に門戸が開かれた。

保守的な流れを変えるべく、女性王族には特に留学が推奨されたという。ライラはその制度を使って、マッダーフの反対を押し切り、メルボルン大学に留学したのだ。



「二年間留学し、帰国されたのは今年の三月と聞いています。留学を許可されたのは、帰国後、王太子の正妃となられることを了承された為だと思っておりました」


二年間の自由と引き替えに、一生縛られるなんて、舞にはまったく理解出来ない。

だが、ヤイーシュは違う意見のようだ。


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