琥珀色の誘惑 ―王国編―
近隣の国では、いまだに奴隷の売買が横行している。砂漠は国境が微妙な為、そういった無法者の格好の狩り場となっていた。観光客のテントが襲われ、女性旅行者が誘拐されるという事件が幾つも報告されている。

そんな状況の中に舞はいるのだ。

万にひとつも舞を傷つけた者がいれば、国籍・身分を問わず、全員の首を刎ねるつもりでミシュアル王子は捜索にあたっていた。


そしてそれは、つい先日まで側近であったヤイーシュも例外ではない。

東京都内のホテルでの一件。あれ以降、ヤイーシュの態度が急変した。

彼はそれまで、日本人の花嫁を迎えることに始終反対と言い続け、長老方とも連絡を取っていたような男だ。

それがなくなり、ホッとする反面、ミシュアル王子は不安にも駆られた。


女性専用デパートの前で、舞の盾となった件もそうである。

当然、ミシュアル王子もヤイーシュに感謝し、褒美を与えようとした。しかし、ヤイーシュはそれを断わった。

しかも、「族長を引き受ける為、部族に戻りたい」――そう言われたのは、事件直後のこと。


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