琥珀色の誘惑 ―王国編―

(16)ライラの真実

写真の裏にアラビア語で何か書かれてあった。

だが、今の舞にはアラビア語といたずら書きの区別はつかない。

ただ、その中に数字があり……どうやら撮影の日付のようだ。西暦で書かれてあるので舞にもわかる。


(20××・5・11……去年の今頃?)


ヤイーシュの話を聞いた時、舞の頭に思い浮かんだのは――ライラの母親はサマン王女とは別人じゃ、というものだった。


悪名名高い軍務大臣マッダーフである。

どうしても、王女に産ませた子供が欲しくて、側室だか愛妾だかに産ませた子供を“王女の娘”と偽ったのではないだろうか、と。

だから、ライラはサマン王女とは似ていない。この写真の女性はライラの実の母親……。


という仮説が、この写真が一年前に撮影されたものなら完璧に崩れてしまう。

話はもっと単純で、この離宮でライラが赤ん坊を抱いた所を写しただけなのかも知れない。


小さく息を吐きながら舞が写真を元に戻そうとした、その時だ。



「……見たのね……」


舞がハッとして振り返ると、そこにライラが立っていた。


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