琥珀色の誘惑 ―王国編―
「そうだ。だがライラは王女の娘、一般人ではない。我が国は王族の名誉を汚されたのだ。合衆国政府にも話を通し、その男とライラを結婚させれば……少なくともライラは助命され、婚姻により国籍を失うに留まるだろう」


ミシュアル王子の言葉にターヒルやラシード王子も頷いている。

だが、アメリカ人男性と無理矢理結婚しても、国に帰れば三日で離婚するのは目に見えている。

第一、子供が出来たと聞いた途端、嘘をついて逃げ出したような男だ。舞なら絶対に“お断り”である。

だが、ライラは違った。


「わたくしは、アーイシャが……娘と一緒に暮らせるのであれば、国を追放されても構いません。ご命令のままに、何方とでも結婚致します」


一筋の希望が見えたせいか、ライラの頬に赤味が差してくる。

しかし、舞にはとても納得出来るものではない。


「ちょっと待ってよ、ライラ! それでいいの? そりゃ、今でもその人のこと好きだって言うなら……わたしが文句を言う筋合いじゃないけど。でも」

「所詮、無理だったのよ。自由に生きようとした罰だわ。あなたを手に掛けようとしたことを父が知れば、その場で名前を奪われて、処刑されるでしょう。生きてあの子と暮らす望みがあるなら、わたくしはどんな命令にも従います」


舞の言葉に、ライラは苦悩を堪えた表情で答えた。


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